留学体験記・研究滞在記


京都大学欧州拠点では、欧州への留学や研究滞在を志す学生・研究者に対して、情報の発信を行っています。

欧州で活躍する京都大学卒業生や欧州留学経験者の滞在レポートを掲載しています。
また、本学や協定校の実施する研究者交流プログラムの参加者の体験談も掲載しています。
  

【欧州で活躍する留学生】

ドイツでのハンブルグ大学サマースクールに参加して(理学研究科 別所 拓実さん)

ドイツでサマースクールに参加して(理学研究科修士課程1回生 菅澤 裕也さん)

欧州留学体験記 ~ハイデルベルクより(文学部人文学科3回生 森口 遥平さん)

 

【欧州で活躍する卒業生】

EMBLでの研究活動(EMBL(European Molecular Biology Laboratory) 大塚正太郎 研究員)

 

【研究者交流】

海外の大学等での研究や国際共同研究への参画の機会を得ようとする本学の研究者を、中長期にわたり海外へ派遣するプログラムを実施しています。
また、短期・長期の外国人研究者および留学生の受け入れを目指し、受け入れ体制の整備、環境整備を行っています。

HeKKSaGOn(ヘキサゴン)インターンシッププログラム参加者に体験談を伺いました。


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ドイツでのハンブルグ大学サマースクールに参加して

別所 拓実 (べっしょ たくみ)
所属:理学研究科 物理学第一教室 凝縮系基礎論
サマースクール先:Summer School: Particles, Strings & Cosmology 2017
期間:2017年7月の1か月間

2017年7月3日〜28日の約1ヶ月間、独ハンブルク大学で行われたサマースクールに参加しました(Particles, Strings & Cosmology 2017)。専門は凝縮系物理なのですが、素粒子物理の手法を頻繁に使うのでそういった知識を得たい、また英語を身に着けたい、さらには欧米の講義の様子を体感したいなどといったことが参加の動機です。

このサマースクールには11か国から21人の学生、院生が参加しており、受講を通して世界中で物理の研究がおこなわれているという事実を、あらためて実感することができました。参加国を挙げると日本、中国、インド、スウェーデン、スペイン、イタリア、南アフリカ共和国、カナダ、アメリカ、メキシコ、チリです。まさか、チリやメキシコ、南アフリカ共和国で物理をやっている人たちとも交流ができるとは思いませんでした。

講義は午前9時から午後6時までで、物理だけでなく、ドイツ語、ハンブルグの歴史や文化の授業もありました。このサマースクールの目的にドイツやハンブルグのことも色々と知ってもらって将来、博士課程やポスドクなどで再訪してほしいという強い意図があるからなのか、物理以外の講義の割合もかなり多かったという印象です。

物理の講義は順番に各分野を学ぶという形式でした。まず一般相対性理論を学び、それを前提知識として場の量子論を学ぶ。それをまた前提に弦理論を学んだ上で宇宙論、そして最後に素粒子物理を学ぶ、といった感じでした。他に、凝縮系物理や数学の講義もわずかですがありました。また、講義形態は概念に重きを置いており、計算重視の日本とは違う側面から学ぶことができて面白かったです。

ドイツ語の授業はコミュニケーション重視で、難しかったですが、楽しかったです。事前にドイツ語の勉強を自分で少しだけやっておいたことがかなり役に立ちました。この授業のおかげで多少なりとも普段の生活で役立つドイツ語を用いて、現地の人と簡単なコミュニケーションを楽しめるようになりました。それでも、大抵の看板や掲示物、レストランのメニューはドイツ語で書かれていたので、やはり苦労はしました。英語を話せるドイツ人が多かったのはせめてもの救いです。

講義後は毎日のようにエクスカーションが企画されていて、その中で他のメンバーと会話を楽しみながら、英語が身についていったと思います。ビール醸造所や博物館の観光、バスケットボール、サッカー、ランニングなどを通して、他のメンバーから様々な国の大学事情が聴けたのも良かったです。

最初のころは、英語が思った以上に聞き取れず聞き返すことが多かったのですが、最後のころには特によく話していたメンバーの英語は聞き取れるようになっていて、喋るのがとても楽しかったです。また、いろんな国の特有の英語に慣れることもできました。

食事は十中八九とてもおいしかったです。他のメンバーに食事のことを聞かれる度においしいと答えていたら、「タクミはいつもおいしい、って答えるね」と言われるくらいには私としてはおいしい食事が多かったと思います(笑)。I was happy that I met good friends and good foods in Hamburg!! と帰国後にWhatsAppのサマースクール用のグループに書いたらウケました。

ハンブルグの街並みは美しいものでした。日本の建物に近い近代的な建物もありましたが、赤レンガの建物や西洋風の装飾の施した建物が多かったです。また、街のあちこちに壁の落書きが見られ、アートの一つになっていました。そういった混沌としつつも美しい町並みは最後まで見飽きることがありませんでした。


  授業風景


  大学前で記念撮影

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■ ドイツでサマースクールに参加して(理学研究科修士課程1回生 菅澤裕也さん)

菅澤 裕也(すがさわ ゆうや)
 所属:理学研究科 量子化学研究室 修士課程1回生(留学当時)
 サマースクール先:Heidelberg-Notre Dame Joint Summer School in Computational Chemistry 2015  
 期間:平成27年7月6日から平成27年7月11日(6日間)

 ハイデルベルク大学と米ノートルダム大学が共同で行った計算化学に関する初めてのサマースクールに、京都大学から唯一参加した菅澤裕也さん(理学研究科 量子化学研究室修士課程1年生)。帰国から約1ヶ月経ち、あらためてその時の様子や印象についてお話を聞きました。

 学部時代に3週間ほどオーストラリアにホームステイ経験があったので、それなりに英語はわかるだろうと思っていたという菅澤さん。ところが、サマースクール開始後すぐに「何となく」の英語では進められないことがわかってきます。専門用語が飛び交う環境では、必ずしも相手はわかりやすい英語では話してくれません。講義ではたまたま、一番前の席が割り当てられていたので必死に集中していたそうです。「計算」が主題のセミナーだったので数式などは理解できたのが救いでした。

 スクールが行われたのはハイデルベルクの旧市街、中央通り沿いにあるInternationale Wissenschaftsforum (IWH; International Academic Forum Heidelberg)です。そこで月曜日から土曜日までの6日間、文字通り寝食を共にしながら27名の学生が過ごします(ハイデルベルク大学15名、ノートルダム大学9名、深圳大学2名、京都大学1名)。朝の8時半から午前中は2コマ(1コマ105分)の講義が行われます。ランチタイムを挟んで午後は二人一組でグループワーク、最終の土曜日はそのワーク結果のプレゼンテーションです。そもそもの対象が博士課程の学生だったので修士課程の菅澤さんにとって難易度はどうだったのかと聞いてみたところ、初心者への配慮もあり数式だけでない実際の計算例を見せながらの解説だったので特に問題はなかったとのこと。

 午後は二人一組で「自由に何か計算をして最終日に結果をまとめて発表する」という課題が与えられ、グループワークが行われました。菅澤さんはハイデルベルク大学の女子学生とペアになったのですがあいにく、彼女が体調を崩してしまってグループワークができず。最終発表も断念してしまったそうなのですが、「自分だけでもプレゼンをしておけばよかった」と今になって後悔している様子でした。

 プログラムはもちろん、講義だけではありません。参加者と交流を深めるエクスカージョンでは高台にある「Philosophenweg(哲学の道)」から美しい旧市街を眺めたり、ドイツ名物の地ビールの醸造所(試飲付き)を訪れたりしたそうです。そもそも、午前と午後のコーヒーブレーク(30分)、ランチタイム(75分)など参加者と親しくなる時間は十分にあり、唯一の日本人参加者の菅澤さんも当然、英語でコミュニケーションを図ります。一緒にいる時間が長くなると自分と合う相手も見つかって少し深い話ができるようになり、公式プログラム以上に、こういった時間が貴重だったようです。独米の大学のサマースクールではありますが、参加者は必ずしもその二カ国からだけとは限りません。実際、ベトナムや中国などの出身者と自分たちの将来のこと、各国のアカデミックキャリアの事情についてなど様々な話ができたのはとても有意義だったと嬉しそうに語ってくれました。

 「それにしても」と菅澤さん。「英語がもっとわかっていれば」と悔しそうです。「英語が伝わらず、萎縮してしまいました。もっと積極的になっていればと、今から思うとせっかくの機会がもったいなかった」と反省しきりで、京都に戻ってからはNHKの英語講座を聴くなど、意識的に英語に触れるようにしているそうです。サマースクール終了後に参加者がFacebookを立ち上げて自主的に交流が続けられているそうなので、こういった場を積極的に利用して英語で発信していくのもいいですよね。直に発言するより考える時間もありますし。最後に、次に続く人へのメッセージをお願いしました。「ガンガンいこうぜ!」。菅澤さんの今後の活躍に期待しています。ガンガン、いっちゃってください。

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ネッカー川前にて集合写真

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授業風景

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■ 欧州留学体験記 ~ハイデルベルクより

森口 遥平(もりぐち ようへい)
 所属:文学部人文学科 3回生(留学当時)
 留学先:ハイデルベルク大学哲学科(交換留学)
 期間:平成26年3月から平成27年2月(約1年間)

 ハイデルベルクは歴史的街並みの残る古都であり、落ち着いて学問をするのには適した環境です。町の中心に川が流れているなど、京都と似た雰囲気があり、比較的簡単に馴染むことができました。また、留学生活を始める際に必要な、銀行口座・ビザ申請といった諸々の手続きは、ハイデルベルク大学と京都大学が協定校であるため、現地の日本学研究所が実施しているバディ・プログラムに申し込むことによって、現地で日本語を勉強している学生が助けてくれます。

 ドイツ最古の大学にして今なお高度な教育・研究が行われているハイデルベルク大学には世界中から学生が集まっており、講義もドイツ語ではなく英語で行われるものもあります。もちろん大半の授業や生活一般ではドイツ語が使われますので、ドイツ語の能力を持っていることが望ましいですが、その場合はハイデルベルク大学が運営している語学学校で集中的に学ぶことができます。大学での講義は難しかったですが、教職員の方は皆とても親切で、こちらの質問・要望にはその都度対応してくださりました。学術関係のみならず、食堂や図書館、寮といった施設もしっかりとしており、その他スポーツを始めとする多様な課外活動の提供もありますので、研究・余暇ともに充実した時間を過ごすことが可能です。大学が学期中に何度か企画するエクスカーションのプログラムでは、様々な場所に行き、ドイツの歴史や文化を直に学ぶこともできます。

 僕個人としては、専門である哲学の勉強の傍ら、ハイデルベルクで日本学を学んでいる学生とTandemと呼ばれる言語交換をしたりしながらドイツ語の学習をしていました。長期休暇中には、他大学の教授を訪ねたり、ヨーロッパで研究されている京都大学の先輩方にお会いしたりするなど、海外の研究者との交流に努めました。また、京都大学ハイデルベルクオフィスの活動の手伝いをさせていただくことで、京都大学および日本の他大学の国際展開の様子を伺うことができ、昨今大きな話題となっている「大学の国際化」について深く考える機会を得ることができました。

 留学全体を振り返ってみて一番良かったと思うのは、やはり自分の知らない生活環境に飛び込み、相異なる様々な価値観と出会っていく中で、徐々にその地の文化や人々を理解していく経験ができたことです。それを通じて、自らが背景に持つ文化や価値観などを相対的に見られるようになり、日本人としての自覚と責任を感じるようにもなりました。もちろん、個人的な悩みを相談することで友情が深まり、生涯に渡る友人ができたり、食堂のバーでビールを飲みながら、深夜まで話し合っていたときに、全然知らないおじさんがいきなり議論に参加してきたり、ということもありました。このような体験は留学して初めて得られるものだと思いますし、将来自分が社会に出たときに、様々な方々との繋がりを築き、互いに協力しながら物事を進めていく際に積極的に活かしていこうと考えております。

 多くの学生がハイデルベルクに留学し、現地でしか知ることのできない生のドイツを感じながら貴重な体験をすることによって、今後の人生をより実り多いものとされることを心から願っております。

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ハイデルベルクのクリスマスマーケットにて(12月)

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ミュンヘン近郊への旅行(8月)

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■EMBLでの研究活動(EMBL(European Molecular Biology Laboratory) 大塚正太郎 研究員)

大塚 正太郎(おおつか しょうたろう)
 所属:EMBL(European Molecular Biology Laboratory 研究員
 期間:平成23年~滞在中(平成29年6月現在)

欧州分子生物学研究所(European Molecular Biology Laboratory : EMBL)は、欧州22か国の出資により、ハイデルベルクに設立された分子生物学の最先端の研究所です。
今回は、EMBLで2011年より研究に携わる京大・生命科学研究科(竹安研究室)出身の研究員、大塚正太郎さんの活動を紹介します。

 ~海外での研究を志した理由~
大塚さんは、生物の細胞の核の孔を通した細胞間の情報伝達に関する研究に携わられています。欧州での研究に触れたきっかけは、大学院修士課程のときに訪問したマックス・プランク研究所でのディスカッションだったとのことです。刺激的な研究者交流の体験を次のようにお話し下さいました。

「相手が日本の大学院生であっても積極的に意見交換を行い、すでに一流の研究者でありながら新しいものを取り入れようとする欧州の研究者の貪欲な姿勢や、研究者同士の交流の垣根が低いことに感銘を受けたことを、今も覚えています。」

また、出身の竹安研究室には、「プロジェクトの会議をすべて英語で行う」というユニークな環境も備わり、加えて先生の手厚い指導にも恵まれ、「いずれは海外で研究をし、世界中の研究者を相手に切磋琢磨し自分を鍛えていきたい」、と志すようになったとのことでした。

 ~EMBLで得た刺激~
EMBLは世界最先端の研究設備を備えていること、とりわけ高解像度の顕微鏡設備を多種使用できることが、生物の細胞の核の研究を発展させるうえで重要とのことです。また設備面に加えて、研究環境の魅力を次のようにお話されました。
「EMBLには世界各国から多くの世界トップレベルの研究者が集まっており、彼らと日々交流することで多くの刺激を受けられるだけでなく、様々な研究者と人脈を形成することができます。また、EMBLでは様々な分野の国際学会が年に10回ほど行なわれており、EMBL以外からの研究者と交流する機会にも恵まれています。」

 ~困難を乗り越えて~
一方、EMBLで長期間研究を続けるには困難もつきもの。受け入れには厳しい審査に合格しなければならないことに加え、所属するポスドクフェローの9割は、自分自身でフェローシップを獲得し、自身の給与と研究費を確保しなければ研究のスタートに立つことができないとのことです。大塚さんの場合は、日本学術振興会の海外PD派遣プログラム(2年間)を獲得して渡航、その後は現地で別のフェローシップを獲得し、現在、7年目の滞在に差し掛かっています。 EMBLでの最先端の研究環境を、大塚さんはどのように活用されているのか? そのアドバイスをいただこうとお聞きしたら、意外な答えが返ってきました。

「通常の顕微鏡では観察が困難な細胞核の観察・記録を行うために、私は、EMBLで顕微鏡のシステムそのものを構築するところからスタートしました。最初の2年間をかけて様々な検証をつづけ、最適な構成にたどり着き、ようやく従来の方法ではできなかった研究を始めることができました。」

清々しい表情で語られるその裏には、最先端の研究環境に甘んじず、地道な努力と貪欲な追求心をもってチャレンジを続ける姿があることに、気づかされました。

 ~後輩たちへのメッセージ~
「近年、科学の分野は目覚しい発展を遂げている一方で細分化されてきており、科学の今後の発展において他分野の知見や手法を考慮し、融合していくことは、ますます重要になると思います。世界で有数の大学・研究機関で研究することで、学際的かつ先駆的な研究を遂行する能力が身に付くと同時に、将来貴重なものとなるであろう人脈を形成することができます。京大のより多くの大学院生の方に、より積極的に挑戦して欲しいと思っています。」

平成29年5月30日 聞き手:鈴木環

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EMBL外観

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インタビューの様子

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研究の様子(顕微鏡の使用)

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EMBL内観(DNA二重らせん構造がモチーフとなった階段)

 

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