フンボルト財団の研究奨学金を獲得し、家族でドイツに滞在(石東博 研究員)


本学の生命科学研究科出身で、フンボルト財団の研究奨学金を獲得してポスドク研究に携わる石研究員に、奨学金の魅力、応募にあたっての準備、ドイツ研究留学で得た発見についてインタビューしました。

石 東博(せき とうはく)
所属:ハイデルベルグ大学 COS(Centre for Organismal Studies) 博士研究員
期間:平成28年6月~滞在中(平成30年4月現在)

 

  • 幹細胞をどうやって作り出すのか、未解明な分野の研究にドイツで取り組みたい

    ハイデルベルク大学生命科学研究センター(COS)では、基本的な分子原理から植物や動物の細胞生物学、発生生物学、生理学、さらに進化、生物多様性、システム生物学、バイオテクノロジーについての研究がされています。私は、日本では動物に関する発生生物学を研究していましたが、ドイツでは対象を植物に変えて研究をしています。
    海外に留学しなくても、日本でも十分に最先端で研究できる分野が増えてきましたし、ポスドク留学についても、周りの人からネガティブな反応もありましたが、まずは自分で体験しようと思いました。最初は、飛び込みで研究員の公募に申し込みましたが、なかなか受け入れられませんでした。研究滞在のためのフェローシップを獲得している人は受け入れられやすいため、フンボルト財団の研究奨学金に応募しました。

 

  • フンボルトの奨学金は、受け入れ研究室や家族に対する補助が魅力

フンボルト研究奨学金では、奨学金に加えて受入研究室に対しても研究費が与えられるので、奨学生を受け入れることは研究室にとってもプラスになります。また、家族に対するサポートが手厚いです。配偶者や子どもに対しての手当や保険料も支給され、さらに本来の奨学金の支給期間は2年間なのですが、12歳以下の子どもを連れて行く場合は3年間まで延長が可能なのです。欧州では「親時間」(日本で言う育休)が法律にも定められているので、奨学金の制度も研究者が育児に時間を割けるようになっています。

 

  • ドイツでの研究や文化に馴染める工夫・支援もある

フンボルト財団ではドイツの国全体が海外からの研究者を歓迎している、と実感できるイベントが開催されています。例えば、ドイツ連邦共和国大統領も参加する夏の年次総会に、すべての奨学生とその家族が招待されます。そのほかにも、年に数回ネットワークミーティングが開催され、新しくドイツに来た研究者がドイツでの研究や文化に馴染めるような工夫がなされています。また本人だけではなく、配偶者にもドイツ語語学研修の補助があります。
また、帰国後も再びドイツを訪れるための旅費の支援があり、「ずっと仲間」という意識が得られるのも嬉しいですね。

 

  • 申請に当たっては、研究実績よりも研究計画をしっかり立てることが重要

申請書を読んで面白いかどうかが大事だと思います。そのためには、研究計画をいろんな人に読んでもらい、意見をもらうことが重要です。私は、受け入れ先の教授に何度も研究計画を指導していただきました。博士学位論文も審査対象の一部で、私の場合は分野を変更して応募したため、関連する研究実績や未発表データはありませんでしたが、なんとか採用されました。
申請から5ヶ月くらい経って採用が決まりました。当時は郵送での応募だったのですが、その後オンライン化されていて応募が殺到し、審査により時間がかかる時期もあったようです。
一方、申請期間が定められてなく、年中いつでも申請できるのは便利です。

 

  • 留学して、日本人とは違う考え方や違うアプローチに触れることができた

研究の設備という点で言えば、日本のトップクラスの研究所と変わらないレベルなので、日本でも研究はできます。しかし、ここでは世界中から研究者が集まっているため、日本人とは違う考え方や違うアプローチに触れることができ、勉強になります。例えば、日本では実験データはコツコツと何でも取れるだけ取っておいた方がいい、という考え方ですが、ドイツは効率主義なので、効率の悪い実験は「やらなくていい」と言われることもあり、驚きました。年に6週間もある有給休暇はこういうところから来るのだなあと思いました。実際には4週間ぐらい「しか」とらない人が多いですけど(笑)。また、日本では師弟関係がしっかりしており、実験も一対一で指導しますが、ドイツでは学生も自立して実験することが求められており、実習の評価項目の一つになっているほどです。

 

  • 若手・中堅の研究者に、もっと海外の奨学金に応募してほしい

フンボルト財団では、若手研究者だけではなく、中堅研究者(博士学位取得後12年以内の者)を対象としたフェローシップ(6ヶ月〜18ヶ月)もあります。年次総会でいろいろな方にお会いしましたが、サバティカルで滞在している准教授レベルの方が多かったです。あまり日本では知られていないと思いますので、もっと活用して欲しいですね。
日本人にとっては日本学術振興会(JSPS)の海外特別研究員の方がよく知られていますが、海外の奨学金ならではの魅力がありますので、ぜひ挑戦してみてください。

 

実験室には緑色のLEDライトが付いておらず、青・赤の2色だけなのでこんな色をしています。これも効率主義の結果なのでしょうか?


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