交換留学でやって来たドイツで学位取得を目指す(文学研究科 岡田勇督さん)


文学研究科からハイデルベルク大学に留学し博士論文を執筆中の岡田勇督さんに、ハイデルベルクでの留学生活と今後の展望についてお話をうかがいました(2018年5月28日)

岡田勇督(おかだゆうすけ)| 経歴:京都大学文学研究科で博士学位論文執筆中 | 留学先:ハイデルベルク大学 | 期間:2016年10月から現在(1.5年間)

 

ハイデルベルク大学に留学したきっかけ

私は現在、ハイデルベルク大学で教鞭をとっていたドイツ人哲学者ハンス・ゲオルク・ガダマー(1900-2002年)の研究をしています。ガダマーの哲学は解釈学といって、「そもそも解釈とはいったいなんなのか、それを行う時には何が生じているのか」といったことを考えるものです。彼に関する研究は実は米国の方が進んでいたのですが、ハイデルベルク大学には彼の文献が多数残っていることもあり、ハイデルベルク大学に留学することに決めました。学部時代にドイツ語を勉強していたことも、ドイツ留学を決めたきっかけのひとつです。ガダマーは比較的近年まで存命だったので、彼に関する研究者は世界中を見渡しても少ないのですが、いざ留学してみると、自分と同じようにガダマーの研究をするためにハイデルベルク大学に留学している学生が他にもいました。

研究に勤しむ留学生活

こちらでは基本的に研究中心の生活を送っています。哲学科の図書館で文献調査をし、自宅や図書館で論文を書く生活です。

週に一回は研究室のゼミに参加し、学生の研究発表を聞きます。私の所属しているゼミには15名ほどが在籍しており、3分の2は留学生で、私の他に日本人も1人います。ゼミ以外にも有志で集まって読書会を開いたりもしています。

最初の頃は興味のあるいくつかの授業に参加したこともありました。ドイツの授業は日本の授業とは異なりディスカッションをすることが多いです。また京大の哲学科ではあまりいなかった、パワーポイントを使って授業をする教員もいて面白かったです。また言語が異なるので当然ですが、日本では1ページ1ページ丁寧に翻訳しながら読み進めて一学期間かけてようやく読み終える分量のドイツ語のテキストも、こちらでは一回の授業で読み終えてしまうこともあります。だからといって日本の授業が無駄だったということはなく、テキストをじっくり読み込み、正確に解釈するスキルを身に着けたことはよかったと思っています。

 

研究の幅を広げ、ハレ大学で学位取得を目指す

ドイツに来て1年半が経ちますが、最初の1年目は交換留学として滞在していました。当初は交換留学期間後の予定は決めていなかったのですが、できるだけ長く滞在したいという気持ちがあり、現在は短期滞在研究者として研究を続けています。

そしてこちらで研究を進めているうちに神学研究にも興味が湧き、神学者であり解釈学ともかかわりのあるフリードリヒ・シュライアマハー(1768-1834年)について新たに研究を始めたくなりました。彼はベルリン・フンボルト大学の設立メンバーです。日本ではあまり研究されていませんが、ドイツでは政治的にも影響力のある人物でした。実は日本の授業でもシュライアマハーについて学んだことがあるのですが、その時はピンと来なかったのですが…。そこで今年5月にハレ大学の研究者に自分で面談を申し込み、ハレ大学でシュライアマハーについての研究をできることになりました。

京都大学に提出するガダマーについての博士論文を執筆しつつ、それと並行して、10月からはハレ大学で神学博士号の取得を目指します。

 

留学を考えているみなさんへ

自分の留学生活を振り返ってみると、大きなトラブルに巻き込まれなかったおかげもありますが、留学についていいことしか思い当たりません。もちろん小さなトラブルや大変だったことはありますが、いい経験だったと思います。

私は学部生の時にイギリスのシェフィールド大学に交換留学し、博士課程に進学してからハイデルベルク大学に留学しました。ドイツでの生活ではシリア難民と交流する機会もあり、使い古された言葉かも知れませんが、留学を経験してみて「これまでの自分の世界はなんて狭かったのか」と思い知らされました。外国語の習得や新しい人間関係の構築だけでも、自分にとって新しいアイデンティティーとして将来に活かされます。遊びでさえも貴重な経験です。

ですからみなさんには、半年でも1年でもいいので、ぜひ留学を経験して欲しいと思っています。今は具体的な目標がなくても、留学してみたら目標が見つかるかもしれません。むしろ、目標が見つからない人にこそ留学をお薦めします。

 

 

 


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