第5回日独ジョイントレクチャー「日本はスローな社会となるのか~現代日本社会の諸現象と議論」を開催(11/7・京都)


京都大学欧州拠点(ハイデルベルク)とハイデルベルク大学京都オフィスは、11月7日、吉田国際交流会館において第5回日独ジョイントレクチャーを共同で開催しました。

本レクチャーでは、ハイデルベルク大学の卒業生で、かつ京都大学に留学経験のあるミュンヘン大学アジア研究部日本センター エベリン・シュルツ教授が、「日本はスローな社会となるのか〜現代日本の諸現象と議論」をテーマに日本語で講演しました。

シュルツ教授は、19世紀以来のグローバル化・近代化、科学技術の発展を経て生まれた進歩=成長といった価値観が日本にも定着する一方で、「静寂」、「隠遁」、「間」といった土着の感性的概念が存在し、現代の日本社会を「静けさと調和の国であると同時に高速社会でもある」と解釈します。講演では、ソーシャルメディアの発展によるコミュニケーションの変化、「東京」という大都市空間の「周縁」に取り残された地域社会の問題を挙げ、高速化する現代社会において、人間的かつサステイナブルな社会としての「スローライフ」の価値を認識する必要性があると述べました。また3.11(東日本大震災、2011年)以降、社会経済が萎縮する中で、日本固有のスロー化の形はあるのか、といった課題を論じました。

その後、コメンテーターで労働法が専門の吉田万里子教授(国際高等教育院)が、長年にわたる欧州滞在の経験から、日本社会に根強い残業文化や仕事の完璧さを追求する姿勢が、一方で生産性を欠いているのではと指摘しつつ、「日本の労働環境をスロー化する段階にあるのではないか?」と問題を提起する形で質疑応答に続きました。参加した教員や職員、学生は、日常においてスロー化、高速化社会をどのように実感し、意識しているか等、様々な立場から議論が行われました。

本レクチャーは、2016年秋の、欧州拠点のURAによるミュンヘン大学日本学センター訪問がきっかけとなっています。シュルツ教授との意見交換のなかで、「スロー化社会」に関して本学の研究者との交流を深めたいという期待を受け、来日の機会に合わせて講演を企画したものです。
近年、Industry 4.0や、Society 5.0など「超スマート化社会」への議論が加速する中、「スロー化社会」という点から私たちの未来社会を再考する機会となりました。

会場風景 シュルツ教授による講演
吉田教授による解説 質疑応答

*日独ジョイントレクチャーは、相互にオフィスを持つハイデルベルク大学と京都大学が、両大学の学術交流の深化と発展を目指し、不定期に開催しています。

【参考】
・第5回レクチャーのプログラム
・過去に実施された「日独ジョイントレチャー」


pagetop
Search