山本 翔(やまもと しょう)
所属:京都大学
期間:令和元年3月~令和2年3月(約1年)

 

5周年記念の栞

 

5周年記念式典での発表

  • 拠点の活動に携わって ~祝!5周年~

拠点の活動には、教育支援・研究支援という大きな2つの柱があります。陸続きの欧州にある現地オフィスという地の利を生かし、各国の大学や研究機関等を訪問、日頃から研究者や学生交流に関する情報交換を行っています。そこで得られる情報や人脈が拠点の宝となり、本学の宝となり、イベントの企画や交流協定の交渉等、次なるステップに繋がっていく、これが活動の大きな醍醐味のひとつです。

私の駐在した2019年は拠点にとって大きな節目となる5周年、大役を担う一員として記念式典の運営に携わりました。プログラム編成や会場レイアウトの作成、関係者の招待といった準備段階から、当日の式典およびレセプション運営に至るまで、拠点員が一丸となって取り組んだことは記憶に新しい出来事です。とりわけ式典においては、ハイデルベルク大学の歴史ある荘厳な講堂アルテ・アウラにて、事前に周知していない、いわばサプライズ・プログラムを任せていただくことになりました。時間にして僅か5分でしたが、数々の著名人がスピーチを行ってきたであろう演壇にて、拠点における5年間の歩みを発表し、言葉ではとてもいい表せないほどの緊張感、そして高揚感を覚えました。総勢50名が一堂に会した式典とレセプションでは、お世話になってきた方々から祝辞をいただくのみならず、出席者同士にも新たな交流が生まれ、人と人との繋がりがまるで数珠つなぎのように芽生えていく様子が、そこにはありました。

こうした体験は研修生、ジョン万冥利に尽きると感じた一方で、地に足のついた日頃の情報交換やイベント開催による交流がこうして実を結んで新たな種を蒔き、ネットワークが形成されていく過程を目の当たりにし、その意義を学ぶ貴重な機会となりました。

 

  • ドイツに暮らして ~便利な世の中を考える~

振り返れば、驚きと戸惑いの連続で、着任して間もない頃に面食らったのが閉店法の存在です。意気揚々と迎えた最初の週末、土曜日に疲れを癒し日曜日にさあ街へ繰り出そうと思った矢先、どこのお店も開いていないことに気づき、愕然としました。そう、日曜日はお店を閉めなければならない(例外あり)という法律があるのです。噂には聞いていたのですが、日本の常識では考えられず、どこか甘く見ていた自分がいます。ならば日帰り旅を、と電車に乗ろうと駅に向かうも時刻通りに来ず、なんと1時間遅れでした。挙げればキリがないほどに、毎日が異文化体験の連続だったことを覚えています。そして、日本の日常と比較した場合に大きな不便さを感じことは言うまでもありません。

しかしながら、ドイツという国を少しずつ知るにつれ、少し違った視点が生まれました。例に挙げた2つの出来事、少し見方を変えてみたいと思います。まずは閉店法が敷かれる日曜日、スーパーや服飾店、書店、レストラン等が軒並み閉まっています。その裏側を覗いてみると、お店の従業員は元より、閉店していなければ出歩く人々も減り、日曜日は家で家族とゆっくり過ごすことができます。街に繰り出すことがなければ、行き先を変えて山や川、海等の自然に目を向けることもあるでしょう。次に、電車の遅延が許容されるということは、少し極端な発想かもしれませんが、車掌や鉄道スタッフが落ち着いて業務を遂行することができ、過密ダイヤが引き起こすような多大なストレスの抑止、ひいては事故の防止にも繋がっているのかもしれません。

私の中で、優れた利便性や効率性こそが豊かな暮らしの源であるかのように映っていましたが、ドイツで日常生活を送ることによって、こうした気づきを得られたと感じています。一歩立ち止まり、物事を多面的に捉えることができるようになったという実感が湧きました。

 

  • 研修を振り返って ~欧州で学ぶ魅力~

研修生として1年という駐在経験を得られたことは、今後の人生に間違いなく大きな影響をもたらすと思います。語学力の向上や異文化理解、国際的な人脈形成はもとより、この研修を通じて得た最大の自己啓発、それは学生たちに心から留学を勧められるようになったことです。国際性が問われる今、教務系職員は留学希望者を積極的に支援する立場にあります。ただ、時に物事を突き詰めたい性格が災いしてか、留学施策を推し進める必要性に疑いを持っていました。しかしながら、欧州で過ごした1年を通じ、自ら研修生として社会人として留学経験を得ることで、欧州で学ぶ魅力、そして奥深さを知りました。私にとってのそれは、動きのある学びでした。大学教職員が集うワークショップ、大学の講義、語学学校の授業、様々な形態の学びを体験しましたが、いずれも講師と参加者が会話のキャッチボールをしながら議論を展開していく、という点で共通していました。こうして得た経験を風化させることなく、本学に適切なフィードバックを行い、後世に伝えていくことが大切だと感じています。

欧州、ドイツ、そしてハイデルベルクで暮らしが幕を閉じようとしていた頃、欧州でも新型コロナウイルスが猛威を振るい始めました。最後の一週間を噛みしめることができなかったことが心残りではあるものの、また帰って来いよ、そう言われているような気がします。移動が大きく制限される昨今ですが、どのような形であれ、必ずもう一度欧州の土を踏むという想いを胸に、今後も大学人として業務に邁進したいと思います。

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