森 智子(もり ともこ)
所属:京都大学
期間:平成30年10月から平成31年3月(約6ヶ月)

 

シュトゥットガルト大学

職員研修の様子

 

ロンドン留学フェアでの

プレゼンテーション

■志望したきっかけ

 私はこれまで、経理や人事といった直接国際業務に関わりのない仕事をしてきました。しかし大学がWINDOW構想 を掲げ、留学生や外国人研究員を積極的に受け入れていこうとする中、大学内のどの部署にいても国際的な感覚を持って仕事をしていくことの必要性を感じ、このプログラムに参加させていただきました。

■拠点での活動について

 オフィスでは来訪者に拠点ミッションを説明するなどの来客対応のほか、拠点運営にかかわる会計や総務業務などを担当しました。また、交代でオフィスに勤務しているURAの方と一緒に欧州内の大学や研究機関を訪問したり、留学生フェアなどのイベントに参加したりする機会を多く得ました。

 中でも印象深かったのは、着任後間もなく単身で参加したシュトゥットガルト大学主催の国際事務職員研修『World Seminar for International Administrators』です。台湾、中国の他にロシアやオーストラリア、南アフリカの各大学から参加者が集まり、ドイツ国内(主にバーデン・ヴュルテンベルク州)の教育システムについて約一週間かけて学びました。 ドイツの教育システムで特徴的なのは、基礎学校(Grundschule)を卒業する10歳前後という非常に早い時期に将来大学に進学するつもりがあるかどうかを考え、その先の進路を決定する必要があるということです。高等教育への進学を希望する場合はギムナジウム(Gymnasium)という長期教育課程に入り大学入学資格(Abitur)を取得することになりますが、中には英語とのバイリンガルを養成するためのギムナジウムもあり、非常に人気が高いとのことでした。
 私にとってこの研修はドイツの教育システムを学ぶ機会となっただけではなく、英語が大学事務の共通言語として当たり前に使用されていることを実感する初めての場となりました。

 また、2015年に発足した、主に欧州に拠点を持つ日本の28大学・学術機関のネットワーク組織『JANET(Japan Academic Network in Europe)』が年に一度開催するフォーラムに参加する機会を得ました。
 直接ネットワークメンバーと顔を合わせる場を持つことで、互いの活動内容や問題意識を知ることができると同時に、以後、様々な情報交換がしやすくなります。その後実際にボンにあるJSPSの研究連絡センター、筑波大学のオフィスを訪問し、研究資金の情報を得たり大学独自の取り組みを伺ったりするなど、本邦系組織が連携し協力していくことの重要性、有益さを感じる機会となりました。

ドイツでの生活を通じて

 着任する前のドイツのイメージは真面目、几帳面といった通り一遍のものでした。しかし実際にはドイツ鉄道はダイヤが乱れることも多く、長距離特急が30分くらい遅れるのは珍しくはありません。また、旧式列車がまだまだ現役でいるからか乗降口にかなり段差があり、バリアフリーが行き届いているとは言い難い状況にあります。
 ですが、重い荷物を持っているとすぐに人が近寄って助けてくれるので、実際にはあまり困らないのかもしれません。日本では赤ちゃん用のバギーを電車に載せるのに遠慮が必要な雰囲気を感じることがありますが、こちらではそれを感じません。自転車も犬も電車に乗せることができます。犬はトレーニングを受けてから飼われるらしく、非常に良く躾けられていて鳴き声を聞くことはほぼありません。大切なのは設備を整えることだけではなく、人々の寛容さ、気楽に声をかけ合い助け合う姿勢なのだと感じさせられました。

 また、ドイツ人は仕事と休暇の切り分けがはっきりしていて、2週間程度の長期休暇を年に数回取得することも珍しくはないようです。長期休暇の取得しやすい環境はとても羨ましく感じました。
 どうしてこれで仕事が回っていくのか初めは不思議でしたが、とことん無駄を省き、合理性を追求しているからなのではないかと思うようになりました。これは働き方改革を叫ぶ日本にとっても、重要な姿勢かもしれません。家族や友人と過ごすことを大切にし、自然に親しみ、趣味を楽しむ。ワークライフバランスのお手本のような生き方が、ドイツの人々の中にしっかりと根付いているように見えました。

 そして実際に欧州で滞在して驚いたのは、人の流動性の高さです。ヨーロッパ内を移動する時(シェンゲン協定加盟国間)には原則として入国出国のパスポートチェックがありません。移動にかかる費用も日本から来ることを思えば非常に安価で、また時間もかからないため、人々は日本人が国内移動をするような感覚で様々な国を行き来しているようです。それは学生・研究員の留学や就職についても同じです。日本から欧州に留学する、就職するというと少なからず障壁を感じる人が多いと思いますが、欧州ではそのハードルが非常に低いように思えました。

研修を終えて

 日本にいる時にイメージしていた何十倍も、欧州はEUという枠組みの中で一体となって動いているということを肌身で感じました。京都大学が世界の中で存在感を保ち続けるためには、グローバル化、国際化と大上段に構えているのではなく、海外に出て活動するのが当たり前という感覚にならなければいけない。大学職員のひとりひとりがそのような意識を持つことの大切さを強く感じました。

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