第9回 日独ジョイントレクチャー「日本最南端の須恵器窯跡群: 鹿児島県中岳山麓窯跡群における最近の発掘と学際的研究」(5/10・京都)


2018年5月10日に第9回 日独ジョイントレクチャーを開催しました。ハイデルベルク大学先・原史学・近東考古学研究所篠藤マリアが講演、1984年に発見された、古代薩摩国領土(紀元8世紀頃〜)に所在する中岳山麓窯跡群における最新の日独共同調査成果を報告しました。

 

篠藤先生の研究は、当地が国府から離れているにも関わらず多数の窯群が分布していること、琉球列島と類似する須恵器が発見されていることから、南方諸島との交易を通じた独自の文化が成立していたのでは、という仮説から始まりました。

 

考古学発掘や踏査、遺跡や遺物の形状、分布調査に加え、自然科学(元素分析など)やドイツ・ボン大学との共同による地質学調査、さらには地域の陶芸家との共同実証実験にも及ぶ横断的な研究により、材料や技術について従来の手法では判明できなかった情報が得られ、当地の文化の発展過程が1つ1つ明らかになってきました。

 

このような新しい発見や生じる課題に合わせて各分野の研究方針を修正してゆくプロセスを、篠藤先生は、開発途中に仕様変更が頻繁に生じるソフトウェア開発になぞらえて「アジャイル・リサーチ・デザイン」と呼んでいます。

 

続いて、文化財総合研究センターの冨井眞助教は、土器等の考古遺物の分析や自然科学分析からどのような情報を読み取ることができるのか説明し、篠藤先生の横断的なアプローチの意義を、学生や分野外の聴衆にもわかりやすく解説しました。合わせて、レクチャー会場である吉田国際交流会館の建設前の敷地発掘調査からも予想外に重要な遺物が出土し、当時の生活文化に関する定説を見直すきっかけにつながった研究の過程を紹介しました。

 

レクチャーには、高校生から近隣大学の研究者まで幅広く20名以上が集いました。篠藤先生の新たな挑戦について、閉会後のハイデルベルク大学京都オフィスにおけるレセプションにおいても、熱いディスカッションが続きました。

 

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欧州拠点鈴木URAからの挨拶   篠藤先生による講演
     
 
冨井先生によるコメント   質疑応答の様子

 

 


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