第11回日独ジョイントレクチャー開催報告「お前は誰だ? もう一人の私(二重身:ドッペルゲンガー)からの問い」(10/9・ハイデルベルク)


2018年10月9日に、第11回 日独ジョイントレクチャー「お前は誰だ? もう一人の私(二重身:ドッペルゲンガー)からの問い」を開催し、ハイデルベルク大学にゆかりのある学生・研究者ら、約20名が参加しました。

本レクチャーでは京都大学教育学研究科の桑原知子教授を講師に迎え、「自分とはなにか?」という普段は自明のことと思われるテーマに切り込みました。

アイデンティティーの自明性を疑わせる現象のひとつに「二重身(ドッペルゲンガー)」がありますが、講演の中ではギリシャ神話の英雄アンフィトリオンの物語(ゼウスが化けたもうひとりの自分と出会う)を例に取り上げ、聴衆により分かりやすく説明されていました。
このアンフィトリオンの物語は多くの劇作家によって書かれており、悲劇的なものと喜劇的なものとがあります。悲劇的なストーリーではアンフィトリオンが自分自身ともうひとりの(ゼウスが化けた)自分とを明確に区別しようとするのに対して、喜劇的なストーリーでは妻のアルクメーネ(ゼウスが化けたアンフィトリオンを本物と信じて夜を過ごした)への愛の方により重点を置き、そのために自己のアイデンティティーを捨てるところに違いがあると述べられていました。

ドッペルゲンガーに出会った時、人は必ず「お前は誰だ?」、すなわち「自分とは誰なのか?」を問うことになります。この自分自身ともうひとりの自分との関係性を考える題材として、萩尾望都のマンガ『半身』を、実際に一部をスライドに映しながら紹介されました。

講演の最後は、例えば老いや死といった、人が自分から遠ざけたいと思っている「異分子」を自分の外にあるものと隔てて捉えるのではなく、自分自身の奥深いところにその一部が存在するのだと感じることができた時、人はもっと優しくなれるのではないかと述べて話を締めくくられました。

解説者のディルク・ハーゲマン教授は、欧州で盛んな「人格心理学」の考え方から”Who are you?”という問いに迫り、さらにドッペルゲンガーの暗さと無意識の面について説明を与え、講演に新たな知見を加えられました。

聴衆は終始熱心に話しに聞き入り、質疑応答の後、会場の外でも桑原教授を囲んで熱心な議論が続きました。

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桑原教授による講演 ハーゲマン教授による解説 講演後の様子

 


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