パリ日仏高等研究研究センター・ヴァレオフェローでのパリ研究滞在(南 聡一郎助教)


南 聡一郎 | 経歴: 京都大学大学院経済学研究科 特定助教(~2018年3月)
 滞在先:社会科学高等研究院(EHESS)・同日仏財団 (ヴァレロ・フェロー)| 滞在期間:2018年4月~2019年1月

 

 

FFJ-EHESSの客員研究室にて

 

  • 研究テーマ〜地方自治体の交通政策の知見とイノベーション研究の融合を目指して

     

    私は、環境経済学・財政学の観点から持続可能な交通政策について研究してきており、博士論文では、フランスを例に持続可能な交通の実現に資する地方自治体が果たすべき役割について分析しました。

    パリにおいては、「地方政府と持続可能なモビリティ・イノベーション:政策、役割、手段」というテーマで研究を進めています。近年交通分野では、自動運転技術の実用化やシェアリングサービスの発展、MaaS (Mobility as a Service)アプリに代表されるICTの活用など様々なイノベーションが登場しています。

    そこで私は、これまで研究してきた地方自治体の交通政策の知見とイノベーション研究を結びつける研究をはじめました。

パリ郊外ラデファンス新都心で実証実験中の自動運転ミニバス。イノベーティブな交通手段の実証実験は、筆者のパリでの研究でのメインテーマの一つ。

 

  • 社会科学高等研究院・日仏財団(FFJ-EHESS)について

    社会科学高等研究院・日仏財団(FFJ-EHESS)は、日仏の研究交流や日本研究の発展に貢献することを目的に、EHESSに設置された大学財団です。FFJ-EHESSは、日本・欧州間の社会科学部門分野の学際研究の活性化を目的に、日本人研究者・日本研究者の受け入れプログラムとして設立され、様々な研究活動をおこなっています。

    外部ファンドによる豊富なフェローシップも特徴の一つであります。とくに研究フェローシップは、スポンサー企業が設定したテーマに関連する研究を公募するものであり、研究・滞在のための研究奨励金が給付されます。私は、持続可能な交通政策の研究ということで、ヴァレオ研究フェロー「持続可能なモビリティのための革新的技術」に応募し、採択されました。ちょうど、自分の研究を国際的・学際的に広げたいと思っていたので、18年度の研究フェローに挑戦したわけです。

    また、任意の研究テーマに関して自己資金、ないしFFJ-EHESS以外の奨学金プログラムなどでの留学も可能であり、博士課程の大学院生の受け入れも始まりました。

 

  • FFJ-EHESSにおけるパリでの研究環境について

    花の都パリは、魅力的な学術の都にも関わらず、フランス語が壁になってパリ留学を躊躇してしまう人が少なくありません。でも、FFJ-EHESSならば心配は要りません。FFJ-EHESSにおける種々の研究活動では、英語が公用言語であり、フランス語が出来なくても問題はありません。

    EHESSも英語での研究成果発信を重視しており、研究者としての能力があり英語が使えるならば研究上の支障は生じません。生活面でも、パリならば英語や日本語が多く通じます。たとえば、住宅でも海外研究者向けのアパートならば英語が通じますし、日本人スタッフのいる貸部屋サービス業者もあります。

FFJ-EHESSの客員研究室からみたパリの風景

 

  • FFJ-EHESSでの研究活動

    フェローとして採択されると、ディスカッションペーパー執筆とワークショップ開催の二つの義務が課されます。

    ディスカッションペーパーは、留学終了時に提出するものであり、言語は英語です。18年度から査読制度が導入され、編集委員会による審査を経て公刊となります。FFJ-EHESSのサイトで公開されるほか、フランスの研究文献アーカイブサイトであるHALにも掲載されます。

    ワークショップは、自分のフェローシップの研究テーマに関連する欧州や日本の専門家を招聘し、議論をおこなうというものです。研究奨励金とは別に、ワークショップ開催予算が各フェローに配分されます。フランスや欧州の研究者を招聘することで、自分自身の研究ネットワークの拡充の機会とすることができます。

 

ワークショップでの発表

 

ワークショップに招いた講師との記念撮影

 

  • 後継の若手研究者へのメッセージ

    FFJ-EHESSは学際研究交流の場としても極めて魅力的であり、留学すればきっと自分の研究が思わぬ広がりを持ちます。

    EHESSが英語での研究発信を重視していますので、パリ滞在の語学の心配はありません。特に、本フェローシップはサポートが充実していますので、京都大学のみなさんにはどんどん挑戦していって欲しいと思います。

 

 

 


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