第18回 日独ジョイントレクチャー「キュリオシティ・ドリブンの基礎科学、イノベーションと知識移転〜金属イオンを用いた化学を例にして〜」が開催されました。


コロナ禍の2年9ヶ月を経て、日独ジョイントレクチャーが復活しました。

これは、ハイデルベルク大学京都オフィスと欧州拠点が2016年から不定期に開催してきたもので、双方のオフィスを起点とした研究連携の発信を目的の一つにしています。

今回は、ハイデルベルク大学無機化学研究所のPeter Comba教授をお迎えして「キュリオシティ・ドリブンの基礎科学、イノベーションと知識移転〜金属イオンを用いた化学を例にして〜」と題した初めてのハイブリッド開催となりました。

コンバ先生はご自身が長年取り組んでこられた無機化学を例に、化学構造式を見せながらここから何ができるようになったかを示し、基礎科学の重要性を強調されました。基礎科学は文化であり、その文化的使命は知識を創造すること、基礎科学の成功は正しい問いを立て、創造性、知識、忍耐力を駆使して答えを導き出すことにかかっている、とも述べられました。

そして基礎科学を行うための資源を与えてくれるのは社会であり、だからこそその知識を社会と共有し、研究者はその発見を世界の重要な問題解決に役立てることが重要だと結ばれました。

それに対して、一人目のコメンテータの北川進特別教授は、「自分が学生の頃は、これからは有機化学だと言われていたが今日の発表であらためて無機化学の重要な機能を思った」「研究にはその動機も重要だが、忍耐力も大事だ」と話されました。北川先生が開発された多孔性材料を利用したスタートアップ企業は現在、世界中に27ありますが、商業化に当たっては多くの困難があり最初の発見から実用化に約四半世紀かかっていることをあげて、「関心のあるものが見つかったら根気と忍耐が重要」と述べられました。

二人目のコメンテータの北川宏教授は、イノベーションには時間と忍耐が必要とした上でその役割分担について言及されました。即ち、基礎研究の部分は大学が、産業利用の部分は企業が担い、その間の応用研究と技術開発には大学と産業の協働がある、その基礎研究の始まりにあたる0から1は研究者の夢と想像からでしか生まれないと述べられ、「想像とは夢と共に生まれ、情熱をもって追求され、社会への使命感を持って結晶させることです」という言葉で締められました。

会場からは「教員が科学に対する感動や興奮を示していただくと、学生が自分の道を歩んでいく上で本当に助けになります」とのコメントがありました。

   

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