EMBLでの研究活動(大塚正太郎 研究員)


■EMBLでの研究活動(EMBL(European Molecular Biology Laboratory) 大塚正太郎 研究員)

大塚 正太郎(おおつか しょうたろう)
 所属:EMBL(European Molecular Biology Laboratory 研究員
 期間:平成23年~滞在中(平成29年6月現在)

欧州分子生物学研究所(European Molecular Biology Laboratory : EMBL)は、欧州22か国の出資により、ハイデルベルクに設立された分子生物学の最先端の研究所です。
今回は、EMBLで2011年より研究に携わる京大・生命科学研究科(竹安研究室)出身の研究員、大塚正太郎さんの活動を紹介します。

~海外での研究を志した理由~

大塚さんは、生物の細胞の核の孔を通した細胞間の情報伝達に関する研究に携わられています。欧州での研究に触れたきっかけは、大学院修士課程のときに訪問したマックス・プランク研究所でのディスカッションだったとのことです。刺激的な研究者交流の体験を次のようにお話し下さいました。

「相手が日本の大学院生であっても積極的に意見交換を行い、すでに一流の研究者でありながら新しいものを取り入れようとする欧州の研究者の貪欲な姿勢や、研究者同士の交流の垣根が低いことに感銘を受けたことを、今も覚えています。」
また、出身の竹安研究室には、「プロジェクトの会議をすべて英語で行う」というユニークな環境も備わり、加えて先生の手厚い指導にも恵まれ、「いずれは海外で研究をし、世界中の研究者を相手に切磋琢磨し自分を鍛えていきたい」、と志すようになったとのことでした。

~EMBLで得た刺激~

EMBLは世界最先端の研究設備を備えていること、とりわけ高解像度の顕微鏡設備を多種使用できることが、生物の細胞の核の研究を発展させるうえで重要とのことです。また設備面に加えて、研究環境の魅力を次のようにお話されました。
「EMBLには世界各国から多くの世界トップレベルの研究者が集まっており、彼らと日々交流することで多くの刺激を受けられるだけでなく、様々な研究者と人脈を形成することができます。また、EMBLでは様々な分野の国際学会が年に10回ほど行なわれており、EMBL以外からの研究者と交流する機会にも恵まれています。」

~困難を乗り越えて~

一方、EMBLで長期間研究を続けるには困難もつきもの。受け入れには厳しい審査に合格しなければならないことに加え、所属するポスドクフェローの9割は、自分自身でフェローシップを獲得し、自身の給与と研究費を確保しなければ研究のスタートに立つことができないとのことです。大塚さんの場合は、日本学術振興会の海外PD派遣プログラム(2年間)を獲得して渡航、その後は現地で別のフェローシップを獲得し、現在、7年目の滞在に差し掛かっています。 EMBLでの最先端の研究環境を、大塚さんはどのように活用されているのか? そのアドバイスをいただこうとお聞きしたら、意外な答えが返ってきました。

「通常の顕微鏡では観察が困難な細胞核の観察・記録を行うために、私は、EMBLで顕微鏡のシステムそのものを構築するところからスタートしました。最初の2年間をかけて様々な検証をつづけ、最適な構成にたどり着き、ようやく従来の方法ではできなかった研究を始めることができました。」
清々しい表情で語られるその裏には、最先端の研究環境に甘んじず、地道な努力と貪欲な追求心をもってチャレンジを続ける姿があることに、気づかされました。

~後輩たちへのメッセージ~

「近年、科学の分野は目覚しい発展を遂げている一方で細分化されてきており、科学の今後の発展において他分野の知見や手法を考慮し、融合していくことは、ますます重要になると思います。世界で有数の大学・研究機関で研究することで、学際的かつ先駆的な研究を遂行する能力が身に付くと同時に、将来貴重なものとなるであろう人脈を形成することができます。京大のより多くの大学院生の方に、より積極的に挑戦して欲しいと思っています。」

平成29年5月30日 聞き手:鈴木環

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EMBL外観

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インタビューの様子

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研究の様子(顕微鏡の使用)

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EMBL内観(DNA二重らせん構造がモチーフとなった階段)

 


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