「スロー化社会」に関する日独の研究者交流を支援(11/7, 8・京都)


京都大学欧州拠点(ハイデルベルク)とハイデルベルク大学京都オフィスはミュンヘン大学アジア研究部日本センター エベリン・シュルツ教授の来学機会に合わせて、「日本はスローな社会になるのか」という研究課題について本学の研究者との意見交換の機会を企画しました。

シュルツ教授は、19世紀以降の多様なグローバル化・近代化のプロセス、とりわけ科学技術の発展から日本の近代化政策を振り返りつつ、現代の日本社会において「社会経済的な萎縮もしくはスロー化のプロセスが際立ってきている」ことを指摘しています。気候変動、資源枯渇化、金融危機、都市の無制限な膨張が世界的に進み、成長のみを志向する社会が限界に達しつつある中で、日本固有の「スロー化」が向かうべき形について研究を深めています。

この高速化とスロー化の是非は、急速な「国際化」が進む京都にも身近な問題です。近年、京都においては海外からの旅行者、学生・研究者が急増した一方で、加速化する観光開発と伝統的なコミュニティをどのように共存させるのか、という課題を抱えています。

欧州拠点では、ミュンヘン訪問時に、「スロー化社会」に関して京都大学の研究者との交流を深めたいというシュルツ教授の期待を受けて、本学の建築学および地域計画を専門とする研究者との交流を調整しました。

11月7日には、工学研究科建築学専攻の神吉紀世子教授および太田裕通博士研究員とともに、織物産業の「町」としてのアイデンティティが強く残る西陣地区を訪問しました。神吉研究室では、産業構造の変化や人口の減少に伴う開発といった当地域がかかえる問題に対して、地域との対話を続けつつ信頼関係を構築し、住民と一体となってコミュニティの将来像を描いてゆく活動を実施しています。旧西陣小学校の利活用プロジェクト*の現場で実際に意見交換を行うことで、地域が抱える様々な課題をシュルツ教授と共有し知見を深める機会となりました。

翌8日は、本学桂キャンパスを訪問し、工学研究科建築学専攻の前田昌弘講師と共に、住みごこちのよい高気密の住宅と比較し、京都の町屋を活用・再生した事例などについて意見交換を行いました。縁側や地域コミュニテイーを活かした「住みごたえ」のある住宅は、空間と「共鳴」して価値観が高まってゆくのではないかと、活発な議論が行われました。


西陣・地域再生プロジェクト現場における意見交換
(工学研究科神吉教授および太田研究員)  

京都市立西陣小学校における意見交換

なおシュルツ教授は、第5回日独ジョイントレクチャー(11月7日)において、日本のスロー化社会に関する講演を行いました。

*西陣小学校跡地の視察は、西陣地域住民福祉協議会学校跡地活用委員会の協力を得て、本学の学生実行委員を務める太田研究員の解説によって実施されました。

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