活動紹介・若手研究者レポート
新規プロトン伝導機構Packed-acid mechanismに基づくプロトン移動の直接観察
小川 敬也
エネルギー科学研究科・特定助教
受入先: Fritz-Haber-Institut der Max-Planck-Gesellschaft (Berlin) ほか
訪問期間:2019年3月6日~21日

ドイツ側受け入れ研究機関:

  • Dr. Takashi Kumagai, Research Group Leader, Fritz-Haber-Institut der Max-Planck-Gesellschaft (Berlin)

訪問先:

  • Prof. Alexander Colsman, Professor, Karlsruhe Institute of Technology KITEnergy Center

訪問時期・期間:2019年3月6日〜21日

訪問目的:

  • 派遣者が提案する新規プロトン伝導機構の直接観察に必要な試料作成に関する、独側パートナーとの協力体制構築
  • ドイツの研究機関におけるプロトン伝導等の研究者との交流
  • HeKKSaGOn(日独6大学ネットワーク)関係研究者とのネットワーク拡大
 
 

AIDAへの応募動機

プロトンの挙動のサンプル観察における日独連携を目指して

プロトン伝導現象は多くの研究分野に関与するが、プロトンの動きが早すぎるために挙動を直接観察する研究例は非常に少ない。派遣者は新規プロトン伝導機構Packed-acid mechanismを理論的に提案しているが、この挙動の直接的な観測はできていなかった。一方で、フリッツハーバー研究所では、熊谷崇グループリーダーを筆頭として走査型トンネル顕微鏡(STM)によるプロトン移動の直接的観測に対し多大な業績を持つ。そしてSTMに限らず、分光等の観測技術は世界トップレベルで、ハンドメイドのユニークな観測装置を数多く備えている。研究者と交流を深め、京都大学からはサンプル提供し、フリッツハーバー研究所で観測を行う連携体制が整えば互いの研究の促進につながると考え、本プログラムに応募した。

 

滞在の成果

フリッツハーバー研究所、カールスルーエ工科大学の研究者と相互連携を深める機会が得られた

フリッツハーバー研究所では、派遣者が提案するPacked-acid mechanismについて講演し、研究者との意見交換、ラボ視察を行うする機会が得られた。研究所が有するSTM以外の観測技術についても理解を深め、Packed-acid mechanismのプロトンの動きを観察できるサンプルに必須条件の指針を得ることができた。また、派遣者が研究する新規アンモニア合成触媒についても観測技術が応用できることがわかった。

次に、ハイデルベルグにある京大欧州拠点スタッフとともに、HeKKSaGOn(日独6大学ネットワーク)を通じて交流が深いカールスルーエ工科大学(KIT)のEnergy Centerを訪問した。第6回HeKKSaGOn学長会議(2018年4月、大阪)にも参加したA. Colsman 教授から、研究所の実験装置・施設、および実際の実験の様子を紹介いただき、京大側の研究室がもつ技術との相互連携が生まれる可能性を探る機会となった。

これらの機関には、派遣者が所属するグループ代表の石原慶一エネルギー科学研究科長も合わせて同行した。プロトン伝導に限らずに広く共同研究の可能性を探り、同時にラボスケールで今後の学生派遣の可能性も検討する機会となった。

 


KIT Energy Center のAlexander Colsmann教授との意見交換
  リッツ・ハーバーが実際に使用したアンモニア合成装置

今後の展望

フリッツハーバー研究所で観測するための、プロトン伝導材料やアンモニア合成触媒のサンプルの準備を開始したい。そしてサンプル合成の目処が立ち次第、国際共同研究の資金等に応募し、共同研究を開始したい。また、共同研究を通じて相互の学生・研究者の交流を深め、世界的な課題解決につながるネットワーク構築にも注力していきたい。