APRUは環太平洋地域の主要大学間の相互理解を深め、重要な諸問題に対し高等教育機関の立場から協力・貢献することを目的として設立された大学協会で、現在17カ国・地域の45大学が加盟しています。本学は設立時から継続して各事業に参加しています。
第3回APRU Provosts Forumでは、「教育・学習におけるイノベーション(”Innovations in Teaching and Learning”)」をテーマに7つのセッションが設けられ、20の加盟校から副学長を中心に、30名の参加がありました。本学からは、飯吉理事補(教育担当)・高等教育研究開発推進センター長が出席しました。
セッションⅠ「教育・学習に関する研究(”Research on Teaching and Learning”)」では、大学において教員による自らの教育実践研究を奨励し、「学習成果のエビデンスに基づいて教育を行う」文化を根付かせるには、どのような取組や支援が必要かというテーマが取り上げられました。各学問分野での教育研究において、価値観や方法論として何が重要であるか、教育効果をどのように測定・評価できるか、さらに、既存の教育研究の成果をどのように授業・教科・カリキュラムの改善に活かすことができるかなどが、実践例と共に検討・議論されました。
セッションⅡ「教育実践において影響力の大きいイノベーション(”High-Impact Innovations in Practice”)」では、効果の高いイノベーティブな教育実践を、日常的な授業の中にどのように取り入れていくか、というテーマが取り上げられました。多大な労力を費やすことなく高い教育改善の効果を上げるには、どのような方法が用いられるべきかが、ファカルティーデベロップメント(FD)やティーチングアシスタント(TA)のトレーニングや活用などの観点を踏まえ議論されました。
セッションⅢ「異なった教室環境におけるアクティブラーニング(”Active Learning in Different Classroom Environments”)」では、主体的な学習を促すアクティブラーニングが、異なった授業環境(受講者数や教室のサイズや受講者層等)や教育・学習の文脈(科目・分野・授業形態等)において、どのように導入・実践されるべきか、というテーマが取り上げられ、大掛かりなアクティブラーニング用教室やICTの活用事例から、多くの授業において簡便に利用できるアクティブラーニングの手法が紹介され、参加者間で意見・情報交換が行われました。
セッションⅣ「より良い教育・学習を推進するために副学長に何ができるか(”What Can Provosts Do to Encourage Better Teaching and Learning?”)」では、ワシントン大学のInterim Provost・上級副学長のProf. Baldastyがモデレータを務め、大学においてイノベーティブな教育改善を推進するために副学長が果たすべき役割について、「資金助成」、「主導のためのリーダーシップ」、「ネットワーク形成」、「コミュニケーション」、「報賞制度」の5 つの観点から、話題提供と全体ディスカッションを通じた意見交換が行われました。
セッションⅤ「個々のキャンパスを越えて教学を向上させるために、APRU加盟大学はどのように協力できるか(”How Can APRU Institutions Collaborate to Advance Teaching and Learning Across Campuses?”)」では、ARPUの加盟大学間における教育改善やFD における連携・協力について実例の紹介が行われた後、どのようなテーマやレベルにおいて、このようなパートナーシップや実践コミュニティーの形成が可能かについて、少人数グループに分かれてのディスカッションやクリッカーを用いた意見交換などが活発に行われました。
セッションⅥ「イノベーションと大学(”Innovation and the University”)」では、ワシントン大学のイノベーション担当副学長のDr. Jandhyalaがモデレータを務め、大学における迅速で効果的なイノベーションの創発と普及を図るために何が重要であるかについて、同大の取組を中心とした事例紹介が行われた後、「未来の大学を新たに創造する」という課題を巡って、少人数グループによるディスカッションと発表が行われました。
セッションⅦ「産学連携(”Public-Private Partnership”)」では、各国において大学への公的助成を巡る状況が厳しさを増しているという背景を踏まえ、大学の教育・研究を活性化させるための新たな産学連携の可能性について、事例紹介に続き、少人数グループによる産学連携モデル構築のためのプロジェクト企画、さらに各グループによる企画案の発表が行われました。
本フォーラムの全てのセッションは、アクティブラーニング型の教室でクリッカーやスクリーン共有システムなどを利用して実施され、講演・講義形式のプレゼンテーションは最小限に留められる一方で、教育実践研究から得られた知見や事例紹介などを踏まえたグループワーク、ディスカッション、発表等が活発に行われました。また開催に先立って、各セッションの骨子・参考文献・ビデオ資料などが、LMS(オンライン学習支援システム)を通じて参加者に提供されました。これらの相乗効果によって、三日間を通じた本フォーラムにおいて、「各大学からの参加者同士によるICTを活用したアクティブな学びの成果は大きかった」という感想が、多くの参加者から聞かれました。今回のフォーラムの成果を踏まえ、今後APRU加盟大学の教学支援センター(”Center for Teaching and Learning”)等の間で、教育改善や教育イノベーションに関する情報交換や人材交流を積極的に進めるというネットワーク連携の方針が打ち出されました。