ドイツの企業研修で学んだコミュニケーションの大切さ ーヴルカヌス・イン・ヨーロッパプログラムによるインターンシップ


本学の情報学研究科システム科学専攻の修士2回生に在籍中の内田剛志さんは、2017年4月から2018年3月までの約一年間、日欧産業協力センターが実施するヴルカヌス・イン・ヨーロッパプログラム*を活用してドイツに留学、現地企業でインターンシップを経験されました。
このたび、帰国された内田さんに詳しく話を伺いましたので、ここに紹介します。(2019年2月20日)

内田剛志(うちだつよし)| 京都大学情報学研究科システム科学専攻

まずは、内田さんがヴルカヌス・イン・ヨーロッパに応募された経緯を教えてください

私がこのプログラムに出会ったのは、いまから5年ほど前のことです。当時、おぼろげながら「いつかは海外に長期間滞在したいな」と考えていたため、試しに、京都大学国際教育プログラム(KUINEP)の説明会を聞きに行ったところ、このプログラムが紹介されていたというわけです。ただ、そのときはまだ自分が応募するとは考えていませんでしたが。

 

ヴルカヌス・イン・ヨーロッパは、海外での企業研修が組み込まれているので学部生の早い段階では少しハードルが高いのかもしれませんね。修士課程で実際に応募されたときはどのような心境だったのでしょうか。

何をするにも語学力が重要になりつつあるいまの世の中、英語の学習機会は身の回りでも簡単に見つけることができます。そうした中で、まとまった自由時間が確保できる学生のうちに、英語以外の言語を学んでみたくなったというのが本音です。また、異国での生活を通じて、自分のことをもっと深く知りたいとも思っていました。

 

応募作業は大変でしたか。

ヴルカヌス・イン・ヨーロッパのプログラムに求められるTOEFLやTOEICのスコアはそこまで高くないため、応募についてはそこまで苦労しませんでした。学びたい言語も、渡航したい国も特に定めていなかったため、企業研修では広くハンガリー(Bosch社)とドイツ(TMD Friction社)を希望しました。その後、二度の国内選考があったのですが、選考基準が明瞭ではなく戸惑いました。

 

ハンガリーとドイツを希望したとのことですが、実際には、どのようにして渡航先を決定したのでしょうか。

二度の国内選考を通過すると、応募者の履歴書や志望動機書、成績書、推薦状などといった必要書類が企業へ提出され、学生の受入れの可否が検討されることとなっています。この間、ハンガリーの企業から面接の打診を受けていたのですが、ドイツの企業からの受け入れ通知が先に届いていたのでこれを辞退し、改めて渡航先を確定したというわけです。

 

渡航後の語学研修はいかがでしたか。4ヶ月間で基礎を身につけるというと、毎日授業がキツキツという印象を受けますけれども。

私も最初はそのように想定していたのですが、実際に語学学校が始まってみると、全然そんなことはありませんでした。授業は週5日に及びますが、その多くがお昼過ぎに終わるので、午後は比較的自由な時間を過ごすことができます。私の場合、語学学校の仲間と周辺の観光に出かけたり買い物をしたりしていました。ただ、語学研修が終わるとすぐに企業研修が待ち構えているので、本腰を入れて学習しないとその後の生活が大変になるのも事実です。

ちょうど企業研修の話が出ました。内田さんは、ドイツのレバークーゼンで企業研修を受けたと伺っていますが、TMD Friction社での研修の様子を教えてもらえますか。

TMD Friction社は、自動車ブレーキの摩擦材を製造する世界有数のメーカーです。私は機械系部門に配属となり、上司の手ほどきをその都度受けながら業務に携わりました。このように書くと響きはよいかもしれませんが、業務遂行のためには複雑な専門知識の理解が求められるので、多くの場合、上司とのやり取りは英語で行いました。もちろん、簡単な日常会話をこなせるくらいまでにドイツ語は上達していましたが、仕事上でのミス・コミュニケーションは大きな問題を生じかねないので、その点は意識せざるを得ませんでした。

また、私が働いていた企業では勤務時間が遵守されており、オンとオフのメリハリがしっかりとつけられていたのも驚きでした。仕事も余暇も同じくらい大事、という働き方はとても理想的だと感じました。

 

生活はとても充実していたようですね。これにてインタビューを終えたいと思いますが、最後に、ヴルカヌス・イン・ヨーロッパでの企業研修は内田さんにとってどのような意味がありましたか。

先ほど述べましたが、企業研修を通じて、日々のコミュニケーションの大切さを学びました。これまでは、日本ということもありそこまで意識しなくても意思疎通が図れていましたが、海外の仕事現場に身を置いてみて、生産的な仕事を行うためには密な情報共有が必要であることを痛感しました。こうした意識の変化が、私にとっては最も大きなものだったように感じています。帰国後に就職活動をして、無事に日本の大手通信企業から内定をいただきましたが、今後も、ドイツで学んだこの教訓を忘れず仕事に取り組んでゆきたいと思います。

 

ヴルカヌス・イン・ヨーロッパのプログラムを通じて内田さんは、社会で働くためのしっかりとした土台を作られたようですね。今後のご活躍をお祈りしています。

 

*ヴルカヌス・イン・ヨーロッパプログラム(日欧産業協力センター)
日本の理工系学生を対象とした、一年間の奨学金付プログラムです。 欧州での4ヶ月間の語学研修と8ヶ月間の企業インターンシップから成り立っています。応募は毎年5月頃に開始、翌年の4月からの派遣となります。


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