第13回日独ジョイントレクチャー開催報告「カナリアと機械――炭鉱・都市・大気の安全性をめぐって」(1/17・ハイデルベルク)


2019年1月17日に、第13回日独ジョイントレクチャー「カナリアと機械――炭鉱・都市・大気の安全性をめぐって」を開催しました。

京都大学人文科学研究所において近代の科学技術史を研究する瀬戸口明久准教授が講演し、ハイデルベルク大学環境物理学研究所のデニス・ポーラー教授がコメンテーターとして発表、文理を超えた様々なバックグラウンドの学生、研究者が参加しました。

瀬戸口准教授は、本学とハイデルベルク大学国際連携文化越境専攻(Transcultural Studies)が実施するジョイントディグリープログラム の運営の一環で、2018年12月からハイデルベルクに滞在、授業を担当しています(〜2019年2月予定)。

当レクチャーでは、ユネスコ記憶遺産(世界の記憶)の登録を受けた炭鉱画で知られる山本作兵衛等によって1970年代に描かれた 炭鉱画、三池三川炭鉱炭塵爆発事故(1963年)を報じた当時の新聞記事など、当時の貴重な資料を多く交えながら、大気汚染のモニタリング方法の時代の変遷を解説しました。炭鉱の毒ガス検知器として、かつては動物の感覚に頼りカナリアが使用されていた時代から、今日の機械による客観的手法に進化した様子を紹介しました。

ポーラー教授は、排気ガスが人体に与える影響や、都市における排気ガスのモニタリングと近年における変化について、専門外の聴衆にもわかりやすく解説。また自身が開発に尽力した、持ち運び可能な排気ガス測定装置(ICAD)を用いて、ハイデルベルク市内の決まったルートを自転車で24回以上測定した結果を紹介。道を一本隔てただけで大きく数値が異なる結果は、参加者からも身近な健康上の問題として興味が示されました。

講義後の質疑応答の時間には、日本を含むアジア全体においても環境モニタリングのデータを共有することで、環境問題の解決にむけた新たな国際基準を設けることにつながらないか、といった質問がありました。科学史や環境の専門家の協働は、こうした地球規模課題の解決にむけた貢献につながるかもしれません。

講演終了後は場所を移し、第9回京都大学交流会―スタムティッシュ― を開催、新たに日本人留学生や日本に興味のあるドイツ人学生なども加わり、和やかな雰囲気の中で談義が夜遅くまで続きました。

 

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瀬戸口准教授による講演 ポーラー教授による解説 質疑応答の様子

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